瞬く星は永遠に輝く

written by 朱夏様

ストーリー、デートネタバレなし。アニメは履修済ですが本編はまだまだ勉強できていません。デートも回収できていない事が多いのでもし既出ネタ被りなどありましたらごめんなさい!!どうか生ぬるい目で読んでくれたら嬉しいです。

ポテチ姫は永遠って信じる?

突然どうしたの?



ねぇ、キミは信じる?

勿論!わたしは信じてる!



ハハハッ!さすがはポテチ姫。可愛いね。

もう!子供みたいってからかっているんでしょ?



揶揄ってなんかないよ!

じゃあ、キラはどうなの?



僕もね。信じてるよ。だってキミが僕の永遠だもの。けど、たまに思うんだ『永遠』って人が見ている夢みたいなものかなって。

……人の夢?



うん。『そうありたい』って願う人の想い。



そんな風に話すキラはとても寂しげで儚くて、少し伏せたその瞳が酷く哀しそうに見えたから。わたしは思わず手を伸ばしてフワフワとした金糸の髪にそっと触れた。なんの根拠もないけれど彼に大丈夫だよと静かに告げれば、彼はふわりと微笑んでわたしをぎゅっと抱きしめる。わたしの耳元に彼の唇が近づいて秘密の想いが静かに紡がれる。吹きこまれるその声が脳を痺れさせてわたしの心臓をドクリと震えさせる。恥ずかしくて思わず目を強く閉じれば彼の明るい笑い声が聞こえた。



嗚呼。彼にはこうやってこの世の憂いを纏うことなく、ひたすらに。ただ、笑っていて欲しいと胸の中でそっと願う。彼の澄んだ瞳が、魂が一点の曇りもない広い空であるがままに輝けるように。



けれど…人々は彼の放つ光が眩し過ぎるが故に其処にある常闇。否、本当の輝きを終ぞ知ることはない。



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今日は彼の誕生お祝いの日。思いっきりキラに楽しんでもらわなきゃ!!そう意気込んで両手で持っていた手作り弁当の入った手提げをぐっと握りしめる。今日はとっても素敵な日になるといいな。そう、胸が躍る1日の始まりだ。



その日の前夜、連れていきたい場所があるからと電話口で突然言い置かれて翌日、キラがマンション前まで迎えに来てくれる約束をしていた。近頃仕事で忙しくなかなか会えないと思っていたからとても嬉しい。



暫くして車に乗ったキラが颯爽と現れた。緩やかにスピードを落としてわたしのすぐ目の前に停車する。窓ガラスを開けて、掛けていたサングラスを外せば、其処にあるのは揺らめく青の洞窟のように綺麗な瞳。それは太陽の光が差し込んでキラキラと瞬いて見える。まるで彼の存在全てがこの世の神が創造し得た完璧なまでの最高傑作みたいだ。もう何度も彼とこうして会っているのに彼のスター性に思わず圧倒されてしまう。



「ごめん、待った?あれ。ポテチ姫、大丈夫?またオレに見惚れてたの?」

「っ~~!!」

「正直者にはきっといい事があるよ〜!このキラが約束します!」

「もう!そんなこと言ってないでしょ!」

「言葉では否定してても表情で丸わかりだよ。キミはわかりやすいから。」

「……。わかりました。もう降参!」

「えへへ〜!ちょっと待っててね。」

キラは運転座席から素早く降りると助手席に回ってドアを開けてくれる。



「さぁ、どうぞ。オレのお姫様?」

そんな台詞に頬が染まるのがわかる。恥ずかしくて俯いたまま静かに車内に乗り込もうとすれば持っていた大きな荷物をそっと片手で奪われる。キラの手慣れたエスコートにぎこちなく反応してしまうからそんなわたしの様子を楽し気にみている彼を少しだけ恨めしく思った。今回の目的地は知らされていない。わたしはただ、泊りがけでピクニックに行こうと言われていたのでその準備はしてきたのだけど……。



「キラ…。これはどういうつもり?」

「ん?これから向うのは取っておきの場所なんだ。だから安心してオレに全部任せて?」

「そうじゃなくて!この目隠しはなんなの??」

そう。彼が運転座席に戻ってから直ぐにわたしに何かを被せたと思ったら視界が真っ黒に遮られた。触れてみるとアイマスクの様で外そうとすれば駄目だよと優しく手を掴まれて諌められる。けれどやっぱり気になって本人に問いただしているのだ。



「ああ、それのこと?到着までキミに秘密にしておきたいからに決まってるよ!」

「……サプライズなのは嬉しいけど、目隠しはしなくてもいいんじゃない?。」

「良くないよ。それにこれだとドキドキするでしょ?」



自分の魅力を十二分にパフォーマンスできるよう研究しつくされた声色で耳元近くで囁かれる。視覚を奪われている分、余計に声がダイレクトに入って思わず身体が震えてしまう。クスクスと笑う声とそっと彼の離れる気配を感じてほっと息を付けば車がゆっくりと動き出した。鼓動は未だに速くて落ち着かせるためにゆっくりと深呼吸をする。今日はまだ始まったばかりなのにこんな調子じゃ人生で使える心拍数をかなり消費してしまいそうだ……。



「少しだけ遠い場所だからキミはゆっくり寝ていていいよ。昨日も遅くまで仕事してたんでしょ?それにお弁当の準備もしてくれて無理をさせてごめんね?」

「そんなこと気にしないでいいのに。疲れているのはキラも同じでしょ?運転してくれているんだからわたしだけ休む訳にはいかないよ。」

「オレはポテチ姫が側に居てくれるだけで元気いっぱいなの~!良いから少し休んで?それにそのアイマスクは眼球疲労に良く効くんだ。勿論、キミへのプレゼントだよ。」

「うっ。至れり尽くせりすぎるよ……。でもわかった。何も見えないしそうさせて貰う。ありがとうキラ。」

そう言えば彼は嬉しそうにハミングをし始めた。その歌声がとても心地良くてわたしはウトウトと深い眠りに落ちていった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ポテチ姫。ポテチ姫〜!そろそろ起きて。到着したよ。……うーん。起きないな……。それじゃあ、キス。しちゃおうかな?」



その瞬間。

ガバリと身体が反射的に動いて覚醒する。ずるりと目から落ちたアイマスクを慌てて外せば眩しいほどの金髪と美麗なご尊顔が目の前にあった。



「うわっ、キラ!近いよっ!」

慌てて彼から距離を取って咄嗟に前髪を整える。

「やっと起きた〜!おはようポテチ姫。」

「うん……。すっかり眠っちゃった。」

「良いんだよ。オレの運転に安心してた証拠でしょ?男としては嬉しい限りだから気にしないで!」



そんな優しい言葉に包まれてほわほわした気持ちのまま、ふと車窓から外の景色を見てみるとそこには可愛らしい外観をしたお家と美しい湖が静かに佇んでいた。



「わ~!!とっても綺麗な場所!お家もすっごく素敵!!」

「でしょ〜!絶対に喜んでくれると思ってたんだ。」

「でも、此処っていったい……」

そうわたしが問えば以前、旅番組でお世話になった老夫婦とすっかり仲良しになり孫のように可愛がってもらっている事。キラがいつでも帰ってきて良いように綺麗に手入れをしてくれている事を教えてくれた。



キミと此処に来たかったんだ。と優しい眼差しで囁かれて再び頬が染まる。今日も彼にたくさん驚かされてしまっている。本当はわたしがサプライズしないといけないのに……と少しばかりの反省が頭をよぎる。でも今日はまだまだこれからが本番!ぺちりと頬を両手で挟んで気合を入れる!そんなわたしの様子を可笑しそうにみるキラにお昼ごはんにしよう!!と笑いかけた。



お天気もいいし折角だから湖の畔にレジャーシートを敷いて持ってきたお弁当やお菓子を広げる。こんな風に誰かとピクニックをするのも随分久しぶりだ。



「キミが作ってくれたお弁当。とっても美味しいよ!」

「ほんと?良かったー!見栄えは悪いんだけど……味は前よりも成長したと思うからそう言ってくれて嬉しい!」

「うんうん。確かに見た目は悪いし独創的だけどそれがポテチ姫らしさだからオレは好きだよ!」

「何だろう。なんか、こうストレートな言葉が心に刺さる。」

「ハハハッ!ほんとキミといると楽しくて時間があっという間に感じるよ。」

「それはわたしも同じだよ。あとね!見てほしいものがあるの!」

そう言ってまだ彼の前に出してなかったもう一つのお弁当箱の蓋を取る。それはキラをイメージして作った似顔絵弁当だった。写真を見ながら玉子焼きや焼き海苔を駆使して作ったからなんとかキラだとわかってもらえる……と思う。



「これってまさかオレ?うわー!似てる気が…するよ!」

「本当に?頑張って良かったー!それから遅くなったけどお誕生日おめでとうキラ。」

「ありがとう。それと今日はオレに時間をくれてホントに嬉しいよ。」

「それはこっちの台詞だよ!今日はキラのお誕生日祝いなんだからこれくらい当然。むしろもっと我儘になってくれて良いんだからね?」

「それじゃあ……ポテチ姫のひざ枕を所望します!」

悪戯っ子のような顔をしてニヤリと私を見る彼は明らかに確信犯だ。

「それは恥ずかしいから駄目!」

「え〜!何でも言うこと聞いてくれるって言ったじゃん!」

「それは言ってない!」



いつもの様に飛び交う言葉たちは愉しげに2人の間を行き来している。彼となら自然体で会話ができる。何故か呼吸がとてもしやすいと感じたのはいつからだろうか……。彼の言葉には嘘がないと思える。だから安心して素直な気持ちを伝えることができるんだ。



そうしてお腹いっぱいになるまでお弁当やお菓子を食べて温かいお茶を飲む。勿論、周りに人は居なくて風が木々を揺らす僅かな音。鳥のさえずりがとても良く聞こえて心が穏やかになる。2人ぼっちの世界が其処には確かに存在していた。



穏やかな日差しが西日に変わる頃、私たちはお家の中にお邪魔した。内装もやっぱり素敵で心が落ち着く。ここをお手入れしてくれている老夫婦のお人柄がじんわり伝わってくるようだ。ふと大きなダイニングテーブルに目を向けるとそこには「Happy Birthday!キラ!」のプレートが掲げられた美味しそうなホールケーキとまるで不思議の国に迷い込んだかの様なたくさんの豪華な食事が並べられていた。傍にはメッセージカードが添えられていて「二人で楽しんでね♡」の達筆文字。



「キラ…これって…。」

「うん。これはオレも驚いたよ。特別な子を連れていくとは言っておいたけどね。」

パチリと音がしそうなほどに上手なウインクを飛ばさて本日、何度目かのときめきが心臓に刺さった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



今日はダイエットの話はなしだよ!と冗談を言い合いながら用意して貰った夕飯に舌鼓を打った後、素敵なバルコニーから満点の星が広がる夜空を見上げる。都会では到底見ることが叶わない星々本来の輝きだ。



「ねぇ、キラ。星空ってこんなに綺麗なんだね。いつもは街の光で見えてないだけなんだ……。なんだか凄く勿体ないことしてるみたい。」

「うん。オレたちは目の前のモノや偽りの光にばかり目が向いてしまうんだ。其処には宝石箱をひっくり返したような美しい本当の輝きがあるのに…。ねぇ、キミにオレはどう見える?」

「急にどうしたの?」

「何となく。思っただけ。ねぇ?どう見える?」

「どうって…言葉にすると難しいんだけど。わたしにとってキラは大切な人だよ。スーパーアイドルだけどとっても努力家で人の気持ちに敏感で心が優しくてちょっと寂しがり。あとは何よりわたしを大切に想ってくれている人。他にもたくさんあるよ!ええっとね……。」

「………..。」



「キラ?」

「ごめん、ごめん!本当にキミはオレの欲しい言葉をくれるよね〜!でも……。大切な人じゃなくて『愛する人』って言ってもらいたいな?」

「それは恥ずかしくて言えないよ。」

「え〜!照れないで言ってみて!今日はオレの誕生日、でしょ?」

吐息交じりの酷く甘く感じるその声色に心臓がドクドクと加速する。



「……っ。キラはわたしの愛する人だよ。」

「ハハハッ!すっごく嬉しい。オレにとってもキミは世界でただ1人の愛する人だ。」

ちゅっと頬に軽くキスをされて瞬時に頬が真っ赤に染まる。



「あっそろそろ時間だ。ねぇ、ポテチ姫。あれをみて?彼処の一等星のすぐ側にある少し青みがかって見える星!」

「えっどれ?」

急にいつもの雰囲気に戻った彼に慌てながらもその指差された方向をじっと見つめる。けれど一等星に近しい煌めきは沢山散りばめられていて彼の示す其れがなかなかわからない。困ったわたしは彼と同じ目線になろうとして星を眺める彼の顔に自分のそれを無意識に近づけた。



「ふふふ。ほら。もっとオレに近づいてこの角度からなら見えるかも。」

そう言われてずいと腰を引き寄せられた。更に密着する2人の身体にキラとわたしの距離が全く無くなっていることに気づいたけれど、もう今はそれがとても心地よい。



「キラ!見つけたよ!!」

「良かった。もう少しそのままで…。」

何かを待っているような言葉に思わず、彼を伺うように見上げれば「流れ星だ!」と興奮気味な彼の声。

「みて!はやく願い事をしなくっちゃ!」

「凄い!えっと…キラとずっと一緒に居られますように!キラが元気で笑顔でありますように!」

「ハハハッ!3回同じことを言わないと!もう呑気なキミにはやっぱりオレがいないと駄目だね~。ほら。よーく見てて。オレが流れ星を捕まえてみせるから。」



そう言ってキラのすらりとした右手が夜空へ伸びる。煌めく星々は次々と地上の何処か遠くに舞い降りていく。思わず吐息が溢れそうになる程の美しい光景に意識が攫われそうだ。



瞬間。

キラがわたしの目の前で手のひらをぎゅっと握りしめた。「捕まえた!」そう嬉しそうに笑ってゆるりとわたしに向き合う。



「これを君に。この流れ星ならどこにも行かないからゆっくり願い事を言えるでしょ?」

そうしてゆっくりと開かれたその手のひらには澄み切った鮮やかな青。ブルーサファイアのネックレスが在った。



「えっ?!何が起きたの??」

「ハハハッ!気に入ってくれた?」

「気に入るよりも驚いてちょっとついていけないよ……。キラはやっぱり魔法使いなのかな?」

「キミの為ならオレは何にだってなるよ。」

「またそんな事言って!」

「オレはいつでも本気だよ。君に嘘はつかない。」



キラの真剣な眼差しに思わず息が止まる。

その深い青に飲み込まれる。



動けずにいるわたしに彼がそっと近づいてネックレスを付けてくれた。再び感じる彼の体温に視線が泳いでしまう。けれどそれは直ぐに離れて、私の胸元には元々其処に存在していたかのようにとてもよく馴染んだ小さな青い星がキラキラと光っていた。



「うん。思った通りすっごく似合ってるよ!どうしてもこれをキミに贈りたかったんだ。いつでも身につけて欲しいしこれを見てオレを思い出して欲しい。どうかな?」

上目遣いで伺うような声色にうっと言葉が胸に詰まる。



「ありがとう……本当にとっても素敵だよ!でもキラのお誕生日お祝いの日なのにこんな素敵なプレゼントをわたしが貰って良いのかな?」

「良いんだよ!オレは毎日でもありったけの想いをキミに贈りたいんだから。それに本当はもっと大きいサイズのモノをプレゼントしたかったんだけどねー!普段使いできないでしょ?」

「これ以上高価な宝石は貰えないよ!このサイズでも充分過ぎるほどなのに!」

「ハハハっ!そうやって遠慮すると思ってたよ。けどいつか君のこの可愛らしい指に嵌める指輪をプレゼントさせてよ。」



そう言ってわたしの左手を優しく引いて薬指にそっと優しくキスをしてくれた。余りの恥ずかしさに赤面して言葉を失ってしまう。



「オレたち運命の赤い糸で結ばれていると思うんだ。キミとならそんな御伽噺みたいなことも全て信じられるよ。」

「……例え話が大袈裟過ぎるよ。それにキラは赤い糸なんてなくてもずっとわたしと一緒に居てくれるでしょ?」

「うん……ずっとキミと一緒に居るよ。約束する。それが少し遠い未来になったとしても。」 

「遠い…未来?」



今も一緒にいるじゃない?そう思って彼に聞き返せば少しだけ、本当に一瞬だけ泣きそうな表情をしたあと、キラはいつもの眩しい太陽みたいな笑顔に戻って背筋をピンと伸ばし胸に右手を当てて軽く頭を下げた。



「では。世界で一番可愛いオレのお姫様、どうかキミに焦がれてやまないこの哀れな男と一緒に星空の下で一曲、踊ってくれませんか?」



まるで映画のワンシーンのような台詞に息を呑む。するりと差し出されたその大きな手に、無意識に自分のそれを重ねれば、ぐいと腰を引き寄せられて静かに始まる無伴奏のプレリュード。



わたしの胸元に在るそれは大切な願いが込められた永遠に無くならない青い星。2人の溢れる想いをそっと宿してキラキラと瞬き、そして陽炎のように揺らめいていた。



Fin

お題「私のネックレス」でした。
冒頭の時系列は皆さまのご想像にお任せします。
余談ですがわたしちゃんはシルク素材の高級パジャマをキラとお揃いで購入しているのでこの後にプレゼントしてきっと2人仲良くすやすやと幸せに寝たと思います。