来年も多分しお味
一緒にお誕生日を迎えるのは2回目の付き合ってる時空のキラ主ちゃんの話です。ネタバレは特になし。
時計の針が0時を指した瞬間、私は手に持っていたクラッカーの紐を勢いよく引いた。
「キラ! お誕生日おめでとう!」
パーン!とクラッカーの弾ける音と共に目の前のキラに向かって叫ぶと、
太陽みたいにキラキラと輝く髪を揺らし、空を閉じ込めたみたいな瞳を細めてキラは満面の笑みを浮かべた。
「ありがとう、ポテチ姫!」
「今年は一番最初に会って伝えられて良かった」
「去年だって君が一番最初だったと思うけど?」
「それはそうだけど……あれは電話だったし。出来たら直接顔を見て、おめでとうって伝えられた方が嬉しいでしょ?」
「オレは君が祝ってくれる事が嬉しいよ」
去年のキラの誕生日は、仕事のトラブルが発生してしまい会う事が出来なかった。
だから今年は絶対に誰にも何にも邪魔をされないように頑張った。そのおかげで日付が変わる瞬間、キラと一緒に過ごすことが出来た。
といっても一日中一緒にいられるわけじゃない。私もキラも仕事があるから朝にはお別れがやってくる。
(別れの時間を考えるより、一緒にいられる時間を目一杯楽しむ方が優先だよね!)
頭を軽く振り、余計な事を頭から追い出すと、キラに笑顔を向ける。
「ねえ、キラ。お腹空いてない?」
「うん、空いてる」
「ふふ、だと思ったの。本当は一緒にケーキ……とも思ったんだけど、今って深夜だし、それにキラは今日一日でいっぱいケーキ食べる事になると思うの」
「シンさんが許してくれたらね?」
マネージャーのシンさんの顔を思い浮かべて、二人で顔を見合わせて笑う。
「それで……今日はキラのためにポテチを作ろうと思います!」
「え、ポテチって家で作れるんだ?」
「作れるの! それにこれは凄いの、キラにぴったり!」
手を繋いでキッチンに移動する。
キラが来る前に薄くスライスして水気を切っておいたジャガイモを冷蔵庫から取り出す。
「キラも手伝ってくれる?」
「勿論。手伝った方がキミと一緒にいれるからね」
「それ、私も思った」
本当は先に作っておこうかとも思ったんだけど、せっかくのキラの誕生日だ。
私たちだけの特別な思い出が出来た方がもっと嬉しいんじゃないかって気づいたのだ。
スライスしてあるジャガイモをキラと一緒にクッキングシートを敷いた天板の上に並べていく。
最初は余裕をもって一枚一枚並べていたのに、段々スペースが足りなくなっていって、ぎゅうぎゅうになってしまう。
「ふふ、もう乗らないね」
「ここ詰めればいけそうじゃない?」
「キラってば欲張りなんだから!」
間隔を直しながらジャガイモを並べ終え、その上にオリーブオイルを垂らしてオーブンに入れる。
スイッチを押したところで、キラが「あれ?」と小首をかしげる。
「ポテチって揚げるんじゃないの?」
「普通ならポテチって油で揚げるものだけど、それだといっぱい油を吸ってカロリーが高くなっちゃうでしょ?
キラがいっぱい食べれるように、揚げるんじゃなくてオーブンで焼くんだよ」
「……! 凄い!」
「でしょう?」
得意げに胸を張る私を、キラが横からぎゅっと抱きしめてくる。
突然の触れ合いに胸の鼓動が高鳴る。
「キラ、どうしたの?」
「嬉しくなって、キミを抱きしめたくなっちゃった。駄目だった?」
「ううん、駄目じゃないよ。私も嬉しい」
嬉しいだけじゃなく、ドキドキしているからちょっと困るだけ。
頬が熱い。きっと今の私は顔を真っ赤にしているんだろう。
私の顔を覗き込むようにキラは額を擦り合わせてくる。
恥ずかしくて、顔を上げる事なんてとても出来ない。そう思った時、キラが「ねぇ」と口を開いた。
誘われるように視線を上げると、キラの綺麗な瞳と視線がぶつかった。
「ねえ、ポテチ姫。来年も再来年も、こうやって一緒にポテチを作ってくれる?」
「まだ出来上がってないのに、気が早いよ。
でも、来年も再来年も、その先もずっとこうやってキラのお誕生日をお祝いして、一緒にポテチ作りたい」
キラの腰に両手を回し、ぎゅっと抱きしめる。
耳を彼の胸に当てると、トクントクンといつもより早い鼓動が聞こえてきた。
もしかして、キラは勇気を出して言ってくれたの?
そう思ったらどうしようもなく愛おしさが溢れた。
「キラ、お誕生日おめでとう。来年も再来年も、誰よりも先に言わせてね」
「うん、ありがとう。キミのことが大好きだよ」
「私もキラが大好き」
少し背伸びして、キラの頬にキスをする。
不意打ちのキスに赤くなったキラが可愛くて、思わず笑ってしまう。
「今度はオレからキスしていい?」
「うん、いいよ」
そう言って、今度はキラが私の額にキスを落とす。
くすぐったくて、くすくす笑うと、瞼や鼻にまでキスが落とされてしまう。
なので、私も負けじとキラにキスを返す。
キラのためのポテチが焼き上がるまで、私たちはずっとそんなキスを繰り返した。
焼き上がりを告げるオーブンの音がする。
「そういえばこのポテチは何味なの?」
「まだプレーンだからなんにでも出来るよ」
「だったら……こんな甘い時間の後のポテチは塩味しかないね」
「賛成! じゃあ、オーブンから取り出しちゃおう」
「あ、待って」
オーブンに手を伸ばそうとすると、キラに抱き寄せられる。
ちゅ、と触れるだけのキスがようやく唇に落ちた。
「これがまだだったから。これで完璧でしょ?」
「もう、キラったら」
パチンとウィンクをするキラを見て、ますます顔が熱くなる。
――来年も再来年も、その先も。
キラの誕生日をお祝い出来ますように。ううん、絶対するんだから。
少し焦げてしまったポテチを美味しそうに頬張るキラを見つめながら、心に誓うのだった。
HAPPY BIRTHDAY!!
キラくん、お誕生日おめでとうございます! フォロワーさんの影響で、恋プロで初めて知った人物はキラくんでした。 キラくんが美味しいものをおなかいっぱい食べる素敵な誕生日になりますように。

